東京スローリー

特別企画

デラウェア産地の創意が育てた比類なき大阪ワイン

 » デラウェア産地の創意が育てた比類なき大阪ワイン

明治〜現代へ継承する老舗醸造所の試行錯誤

「曽祖父の時代には、ここら一帯は見渡す限りぶどう畑だったそうです」と話すのは、大阪府柏原市のカタシモワイナリー5代目、高井麻記子さん。信貴生駒山系から大阪平野へと続く、緩やかな傾斜地に位置する河内地域は、日照時間が長く、夏場の降水量が少ない。その上、土壌は水はけが良く、ブドウ栽培に適した地理的条件を備えていることから、実は江戸時代には葡萄酒醸造を始めていた歴史ある銘醸地。ブドウの栽培面積は、昭和10年頃に国内最大を誇り、現在もデラウェアの収穫量は全国3位にのぼっている。
その歴史の中で河内ワインを牽引してきたのがカタシモワイナリーだ。初代がブドウ栽培を始め、2代目がワイン醸造に成功。大正3年設立の『カタシモ洋酒醸造所』は、現存するワイナリーでは西日本最古にあたる。「当初は杜氏や醤油屋、味噌屋など、伝統的な醸造技術を持った人がワイワイ集まって、手探りでワイン造りに取り組んだそうです。
機械もすべて手作り。ガスが出すぎて爆発したり、何度失敗しても懲りないところが大阪人らしい」と笑う麻記子さん。実に1世紀にわたり、幾多のトライ&エラーを重ねてきたことで、優れた技術は培われた。常に未知の分野に挑むチャレンジングスピリットこそ、カタシモワイナリー、つまり高井家のソウル。ここからGI認定のワインは誕生したのだ。

技術とアイデアを結集し名産『たこシャン』が誕生

今回、大阪初のGI認定1を受けたワインは、デラウェアを使ったものが多く含まれる。ワイン通の間では軽視されてきたデラウェアに、高井さんがあえてこだわるには理由がある。実は、河内地域のブドウ畑は80%がデラウェア。価格が安く、用途が限られたデラウェアは、地元では〝くずブドウ〞と呼ばれ、生産を維持できない農家が増えていた。そこで、4代目の利洋さんが産地を守るために挑んだのが、デラウェアで美味しいワインを作ることだった。
しかし、当時は技術的に難易度が高く、一朝一夕にはいかなかった。まずは、美味しいジュースを完成させ、次にブドウの皮を原料にした国内初のブランデー造りに挑む。試行錯誤の上完成したこの蒸留酒は、柔らかな飲み口と上品な香りが特長で、イタリアのグラッパとも一線を画す。この芳醇さが評価され、2021年にはサンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティションで金賞を受賞。G20大阪サミットで提供されるなど、世界の愛好家を驚かせる名品へと結実する。
そして、遂に柏原産デラウェアだけで仕込んだスパークリングワイン『たこシャン』が完成を迎える。これは、〝ほんまもんをカジュアルに〞というコンセプトのもと、1本1本手造りで瓶内二次発酵させた本格派。飲み口はキリッと爽やか。華やかな酸味と奥深いコクが絶妙なバランスを奏で、鮮烈なブドウの香りが余韻に残る極上の仕上がり。〝たこ焼きに合う〞ということで命名した名前も大阪らしく、デラウェアを極めたカタシモワイナリーの代表作と言えよう。

3回目の認定会での認定商品GI認定の『たこシャン』(右)と『自社畑 宮ノ下スパークリング デラウェア』(左)
自社畑の有機栽培ブドウを使ったビオワインも限定で生産
明治~大正時代の醸造器具を展示したテイスティングルーム

大阪ワインを世界に!百年畑の挑戦は続く

「全国的にも〝食の都〞として認知されている大阪に、ひとつとしてGI認定がなされていないのは、生産者として寝覚めが悪い…。歴史も技術も、大阪のワインってスゴイ!と多くの人に知ってほしいし、大阪の誇りに思ってもらいたい。私たちの自慢のワインを世界に届けたいと思っています」と麻記子さんは、GI認定に乗り出したきっかけをこう語る。
今でも毎年実をつける樹齢百年を超えるブドウの木から、大阪発の新品種RN-1などをはじめ、多種多様なハイブリッドまで。ブドウ作りにおいてもトライ&エラーを重ねるカタシモワイナリーの百年畑は百花繚乱の趣だ。ここから、次はどんなワインが生まれてくるのか? 老舗にして、チャレンジング。型破りな醸造家の新作を世界が待ち望んでいる。

カタシモワインフード株式会社

電話番号072-971-6334
住所大阪府柏原市太平寺2丁目9番14号

https://www.kashiwara-wine.com/

  1. GI認定とは、地理的表示保護制度のことです。この制度は、その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因の中で育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する農林水産物・食品等の名称を、地域の知的財産として登録し、保護する制度です。 ↩︎

関連記事