日本のセレクトショップの歴史まで知る、頼りになるこの人 ― シップス 銀座店
シップス 銀座店の雨宮さんは18 歳でアルバイトとして会社に入って以来、50年近く、顧客に接してきたプロ中のプロ。スーツやジャケットなどのドレスクロージングから、デニムなどのカジュアルなアイテムまで熟知し、顧客と長く付き合うことを信条にして服選びを手伝ってくれる。
カジュアルからドレスまで、なんでも相談できる
日本の文化の発信地としてさまざまな老舗が立ち並ぶ銀座に、「シップス銀座店」がオープンしたのは1977年。インポートを中心にした上野・ミウラ、渋谷・ミウラ&サンズに続いて、銀座に開いた店で、トラッド、しかもアメリカや英国からの〝本物〞だけを集めた稀有な店だった。現在「シップス銀座店」でドレスクロージングを担当する雨宮教夫さんは18歳のとき、アルバイトでシップスの前身である「ミウラ」に入社以来、50年近く店頭に立つ販売のプロ。
「銀座にシップスが出来たとき、私はまだ渋谷のミウラ&サンズにいました。渋谷のスタッフはみんなロン毛にフレアジーンズで(笑)。その頃、ベトナム戦争を終えたアメリカが徐々に保守化し、ヒッピーやサーファーファッションに代わって、コンサバなトラッドが注目されるようになりました。そんな時期に銀座に新しい店を出すことになり、品揃えもブレザーにチノパン、靴もローファーといった具合に様変わり。スタッフもみんなロン毛を切らされました(笑)」
雨宮教夫さん
あめみやのりお1954年生まれ。
18歳で入社。以来現在の勤務地である「シップス 銀座店」まで、接客歴約50年。最近ではスーツにタイーコイズなどのインディアンジュエリーを合わせ、その独自のミックスルックはファッション業界でも注目の的。雨宮さんの前に並ぶのはこの秋の新作。クリサリスのコート(¥179,300)、チンクアンタのダウンベスト(¥139,700)、サルヴァトーレ ピッコロのシャツ(各¥39,930)は、すべてシップスが別注して製作したものだ。
以来、セレクトショップの老舗として「シップス」は確固たる地位を確立して現在に至るが、雨宮さんによればすでに2代目の顧客が店を訪れてくれることも珍しくないという。自分が愛用した服を息子にも着せようと一緒に来店してくれるのだ。
「お客様と長く付き合いたいので、無理やり売らない。これが私の信条です。信用してもらいたいので、嘘は言わない。似合わないものはやめた方がいいとアドバイスすることさえあります」
カジュアルからドレスまで、日本のメンズファッションの歴史を熟知し、実際に体験してきた雨宮さんにお洒落になる近道を尋ねてみた。
「いろいろなところで服を買うのではなく、〝これだ!〞と思った店で買い続けることだと思います。わからなければスタッフに聞いたり、相談をする。相談されれば嘘はつけないので、本当にいいものをお薦めします(笑)。そういう服の買い方の方が賢いし、無駄もないと思います」
2年後の2025年、「シップス」は50周年を迎える。「基本はいまのままのトラッドで。そして新しいものを吸収して100年後を目指したい」と雨宮さん。その眼には、すでにこの店の未来が映っているようだ。
3階で展開する1929年にアメリカで創業された「サウスウィック」。2020年にアメリカで閉鎖されたが、シップスの手によって再生されたブランド。しかも多くの製品をアメリカで製作する、〝本物〞だ
パーティに最適なフォーマルウェアまで揃っているところがメンズショップの老舗としての矜持と言える
シップスが掲げるテーマは「スタイリッシュ・スタンダード」。
カジュアルウェアでもベーシックなブル
ージーンズや洒落たボタンダウンシャツ
などが常に揃っている
シップス 銀座店
電話番号 | 03-3564-5547 |
住所 | 東京都中央区銀座3-4-15 菱進銀座ビルB1-3F |
営業時間 | 11:00~20:00 |