東京スローリー

滋味溢れるヘルシーな美味しさ ― さくら鍋 みの家

今なお下町深川の風情を残す森下。旧き良き江戸の味と、庶民の粋に出逢える老舗が『桜なべ みの家』である。昭和29年に建てられたという木造家屋に年代物の銅板を用いた看板。艶やかな漆黒の光を帯びた店構えは、ここに降り積もった時の長さとともに、行き届いた手入れの良さを実感させる。

 » 滋味溢れるヘルシーな美味しさ ― さくら鍋 みの家

特製熟成のさくら肉の下町鍋
麹の香味が引き立てる〝令和の甘辛〞

当時は木場で働く職人や船人足が常連だったことから、値踏みされぬよう、全国から銘木を集め贅沢な造りを施した結果だ。度重なる修繕の際にも創業時の姿を頑なに追い求めたことで、この美しい郷愁へと客をいざなう空間が今日まで守られたのである。

肉さし

「この建物を維持しながら、さくら鍋の美味しさを深めたい」とご主人は言う。当代になってから割り下のお味噌を、これまで以上に麹の風味が引き立つ「江戸甘味噌」と希少な「八丁味噌」に変えて穏やかな香味の甘辛になっている。建物が竣工した時代は近隣の肉体労働者が中心だった顧客層は高度経済成長期以降、スーツ姿のビジネスマンになり、現在は下町を散策する若い男女や女性同士の顧客も増えている。これも美味しさの進化の証明なのかもしれない。

実直さが接客に表れる五代目のご主人・永瀬守さん

青森県の契約牧場で大切に育てられてきたお肉を、お店裏にある冷蔵庫でじっくりと熟成され旨みを増す『みの家のさくら肉』。特製の割り下でいただくスタイルは創業以来変わらないが、時代や顧客とともにその美味しさは進化し続け、建物とともに『みの家の味わい』は日々深まっている。

大きな熊手が飾られた1階の座敷
昼と夜で表情を変える中庭
2階のお座敷。改装時には天井の杉の一枚板を入手するのに苦労したと言う
古今亭志ん生師匠をはじめ多くの落語家に愛されてきた。特別室(要コース予約)に飾られている羽子板は志ん生師匠から贈られたもの

さくら鍋 みの家

さくらなべ みのや
電話番号03-3631-8298
住所東京都江東区森下2-19-9 
営業時間平日12:00~14:30(L.O.13:50)
16:30~21:30(L.O.20:50)
土12:00~14:30(L.O.13:50)
16:00~21:30(L.O.20:50)
日・祝12:00~21:00(L.O.20:20)   
休業日火曜日